木簡庫　奈良文化財研究所:詳細

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■詳細

URL		https://mokkanko.nabunken.go.jp/ja/MK011063000002
木簡番号		0
本文		出石□○□〔下ヵ〕○／□前〔桧ヵ〕部□□〔宅ヵ〕／六人部□□／□部〈〉∥○／額田部□□十／日下部米□四／兵官□〔判ヵ〕□並∥○此皇后宮税急奉上
寸法(mm)	縦	585
	横	49
	厚さ	6
型式番号		011
出典		但馬集成5頁-(17),木研11-63頁-(2)
文字説明
形状		上削り、下削り、左削り、右削り。
樹種
木取り		板目
遺跡名		袴狭遺跡
所在地		兵庫県出石郡出石町袴狭
調査主体		出石町教育委員会
発掘次数		1
遺構番号		旧河道
地区名
内容分類		文書
国郡郷里		但馬国出石郡
人名		□前部･額田部･六人部･日下部･□部
和暦
西暦
木簡説明		四周削り。板目。「皇后宮税」の貢進を命じた文書木簡。２行目３文字目の残画は、「君」あるいは「郡」の残画とみて矛盾しない。檜前氏は、東漢系諸氏族の総称。桧前部はその部民。『新撰姓氏録』右京諸蕃上に檜前村主、摂津国諸蕃に檜前忌寸とみえ、大和国高市郡檜前郷の地名にもとづくという（佐伯有清『新撰姓氏録の研究考證篇第五』吉川弘文館、1983年。149頁・370頁）。本木簡に「桧前部□宅」、袴狭遺跡に「檜前部真依女」「檜前部石長」（木簡32:但馬集成8頁-(32)）、「檜前足石」（木簡67:但馬集成13頁-(67)）がみえる。六人部氏は火明命の後裔氏族。身人部にも作る。六人部はその部民であるが、部としての性格や職掌は不明。『新撰姓氏録』右京神別下に六人部がみえる。本木簡に「六人部□□」、但馬国分寺跡に「六人部豊磐」（木簡108:但馬集成19頁-(108)）がみえるほか、隣国では、奈良県石神遺跡出土木簡に丹波国氷上郡竹田郷の「六人部乎佐加柏」（『藤原木簡概報(18)』26頁下154号）、兵庫県山垣遺跡の「竹田里六人部」（２号）、丹後国の可能性が高い「六人部石□」（『平城宮木簡七』11961号）が知られる。額田部氏は、額田部なる部民を管掌した伴造氏族。額田部の職掌は諸説あり、田部、鋳物造りの品部、名代、額田部首の部曲などの説に整理されており（本位田菊士「額田部連・額田部について」『続日本紀研究』238、1985年）、近年は名代説が有力である（狩野久「額田部連と飽波評」『日本古代の国家と都城』東京大学出版会、1990年。初出1984年。森公章「額田部氏の研究－畿内中小豪族の歴史」『国立歴史民俗博物館研究報告』88、2001年など）。『新撰姓氏録』左京神別下・摂津国神別に額田部がみえる。本木簡に「額田部□□」、宮内黒田遺跡に「額田部〈〉」（木簡103:但馬集成17頁-(103)）、隣国播磨国美芸郡横川郷に「額田部廣濱」（天平宝字５年（761）造寺司牒。正倉院文書正集第５巻第１紙・『大日古』四525 など）・「額田部真嶋」（年欠造東大寺司解。正倉院文書続修第28 巻第４紙・『大日古』十五257）、『播磨国風土記』に「額田部連久等等」（揖保郡意此川条）、「額田部連伊勢」（揖保郡鼓山条）がみえる。なお、祢布ヶ森遺跡の「額太部全主」（木簡192:但馬集成28頁-(192)）の表記は類例に乏しいが、あるいは「額田部」か。日下部（草壁・草香部）は、仁徳天皇皇子大草香皇子の名代である大日下部と日香幡梭皇女の名代である若日下部のうちいずれか、または両者の総称とみられ、日下部氏は部民の日下部を管掌する伴造氏族。『新撰姓氏録』河内国皇別・和泉国皇別・摂津国神別・河内国神別にみえる。本木簡に「日下部米□」、袴狭遺跡に「日下部乙訓」（木簡53:但馬集成11頁-(53)）、「日下部国□」（木簡62:但馬集成12頁-(62)）、但馬国分寺跡に「日下部倉主女」（木簡105:但馬集成18頁-(105)）、「日下部大万呂」（木簡106:但馬集成19頁-(106)）、二条大路木簡に「日下部精万呂」（木簡438:但馬集成51頁-(438)）がみえるほか、『日本三代実録』によると、美含郡の人「権大領外従八位上日下部良氏」（貞観17年（875）10月８日丁巳条）がみえる（佐伯有清「但馬の日下部氏の系譜伝承」『日本古代氏族の研究』吉川弘文館、1985年。初出1984 年参照）。但馬の日下部氏は、粟鹿神社所蔵『田道間国造日下部足尼家譜大綱』や『日下部系図』（続群書類従第７輯）によると但馬国造氏族とみられ、『国造本紀』には、「但遅麻国造志賀高穴穂朝御世。竹野君同祖。彦坐王五世孫船穂足尼定二賜国造一」（但遅摩国造条）とみえる。但遅麻（但馬）国造氏は、日下部君、神部直のほかに多遅麻君・朝来直も推定される（鈴木正信「国造関係史料集」篠川賢・大川原竜一・鈴木正信編『国造制の研究－史料編・論考編』八木書店、2013年）。なお、『日下部系図』やその別本の系譜によると、日下部氏は、朝来郡・養父郡の郡領氏族であったことが知られる（吉田晶「古代但馬の豪族と部民- 氏族・部民分布と但馬国造」『但馬史研究』25、2000年）。「兵官」は不詳。「皇后宮」は、共伴する遺物の年代観から、桓武天皇皇后の藤原乙牟漏（延暦２年（783）立后、同９年崩）の可能性があるが、光仁天皇皇后井上内親王（宝亀元年（770）立后、同３年廃后）、聖武天皇皇后藤原光明子（天平元年729）立后、天平勝宝元年（749）皇太后）の可能性も残しておく必要がある。皇后宮職は、封戸や出挙稲などの独自の財源を管理していたとされ（鬼頭清明「皇后宮職論」『古代木簡と都城の研究』"塙書房、2000年。初出1974年）、「皇后宮税」は出挙稲のことか。天平９年度但馬国正税帳によると、「中宮職捉稲（使）」（正倉院文書正集第29巻第９紙第10紙・『大日古』二61～62）がみえ、中宮藤原宮子の中宮職出挙稲が但馬に置かれていた。この使者が出挙と収納のために245日もの間但馬国に滞在し、その管理と運用にあたったことは特筆される（森公章「封戸と封主」平川南ほか編『流通と文字』文字と古代日本３、吉川弘文館、2005年）。中宮職捉稲使の在地での活動は、国府や郡司の関与により実現したのであろう。

■研究文献情報

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研究文献